◆はじめに
2018年4月14日と15日に大阪市にある藤田美術館で【リニューアル前最後の蔵の公開】のイベントがありました。
偶然いつもお世話になっている、お客様に教えて頂き知る事が出来ました。
当日は撮影可でしたが、事前に藤田美術館の学芸員の方に取材許可を頂きました。
撮影と計測させて頂きました。
収蔵庫と展示に使われていた蔵の2ヶ所が公開されておりました。
各部屋の入口に扉が設置されていました。
ほぼ同型なので合わせてお話しします。
入口扉編と窓扉編の2回に分けてご紹介します。
今回は、公開された蔵と収蔵庫入口扉の金庫屋の視点で見たお話です。
◆金庫扉
入口扉は、昔の人の感覚的な表現の【金庫扉】に分類される扉です。
金庫室扉とは違い、金庫扉は明確な定義がありません。
【金庫扉】は厚い鋼板を使った扉というニュアンスだと思います。
◆組み造り
組造りという技法が用いられています。
現在もちいられる板金加工は、画像のように1枚の鋼板を変形させて形を作ります。
組み造りは、以下の画像のように複数の鋼材を組み合わせて形を作り出します。
火造りやカシメなどが用いられていると予想されます。
◆深い煙返しによる特殊な構造
煙返しが深いため煙返しに穴を開けて閂を通しています。
我々はこのような扉を初めて見ました。
◆イロハの文字玉
符号錠の扉の表側の操作部分を当社では【文字玉】と呼んでいます。
現代では、数字で表記されますがイロハ順で表記されているタイプの
符号錠です。
古い製品に見られる符号錠です。
以下の画像が分かりやすいと思います。
◆特徴的な庫内側の蓋
現在の庫内側の蓋はネジで留められているだけのシンプルな事が一般的です。
蓋は重いので、一般の方ですと外すのが大変だと思います。
この製品は手の込んだ作りになっていました。
錠前を開けると蓋を開ける事ができます。
蝶番がついているので重たい蓋を持つ必要もありません。
現在、当社で製作する製品もこのような形態を用いる事があります。
◆二重の扉
庫内側にもう一枚扉がありました。
表の扉と同じように煙返しを切り欠いてカンヌキを通しています。
◆製作厚が厚い
製作厚(扉枠の厚さ)がかなり厚いようでした。
かなり壁厚が厚い事がうかがえます。
◆製造メーカー
表から見る限りメーカー名の表記はありませんでした。
展示に使用されていた部屋の窓扉の鍵のカバーに竹内の表記がありました。
金物も同じなので、推測ですが竹内製である可能性があります。
◆内扉格子戸
亀甲の網の付いた引きの格子戸です。
◆おわりに
いかがでしたでしょうか?
この扉を観た感想としては、当時としてはかなり豪華なレベルだったと思います。
当時の人は、洋風でかなり斬新でおしゃれな印象を受けたと思います。
コンクリート造りでかなりの壁厚がありました。
収蔵物を守ろうとする情熱を感じます。
蔵や金庫はお金持ちが持つ物だった時代を感じます。
我々もこのような素晴らしい仕事ができるよう頑張らなければと思いました。
当社は、このように金庫室扉や蔵扉や金庫の取材を出来るスポットを探しております。
そのような場所に心当たりがある方は、お教え頂くと大変たすかります。
最後になりますが、この場をお借りして取材の許可を頂いた藤田美術館さんにお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
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