第150回

金庫の螺鈿(ラデン)の装飾について(Ver.2.0)

◆はじめに

昔の置き金庫の扉の庫内側・中戸には、装飾として螺鈿が施されております。

※掲載画像は、当社で内製した螺鈿装飾ではありません。

今回は金庫の螺鈿の装飾についてのお話です。

 

◆螺鈿(ラデン)とは

螺鈿は、貝殻の内側、虹色光沢を持った真珠層の部分を切り出した板状の素材を、漆地や木地の彫刻された表面にはめ込む手法、およびこの手法を用いて製作された工芸品の事だそうです。

螺は貝、鈿はちりばめることを意味するそうです。

貝の種類によって全く色合いが変わってきます。

貝の厚さによっても表現が変わります。

使用する貝の厚さなどによっても作家さんの分野も分かれるようです。

 

◆現在の供給体制

15年~20年前から当社が依頼していた職人さんが廃業されました。

関東圏で、金庫の事を考慮して施せる方がいるかは不明です。

当社では螺鈿と蒔絵は、当社の取締役が施し内製しております。

新規製作は、現在でも問題なく供給できる状況を整えております。

練習の為に実際に螺鈿を施し物は【試作練習の実例】の項目をご覧ください。

 

◆作業者

作業者は、漆工を基礎から学んでおります。

作業者は、漆工の技術と知識の他に金庫の設計、製作、修理、施工の技術と知識も持ち合わせております。

それぞれの工程や金庫の特性を考慮して作業できる事が当社の強みです。

作業者の当社取締役は30歳(掲載時)ですので、30~40年は、供給できるめどは立っております。

 

◆価格

普通の漆工の工芸品に比べると大きく重いです。

本漆は、固まるのに時間がかかります。

全て手作業です。

それなりに値が張る事は、ご考慮下さい。

御見積りの発行は、購入資格を有するお客様に限らせて頂きます。

一般に出回っている本漆の漆工の工芸品の値段から推測下さい。

 

◆供給への制限

金庫への螺鈿(ラデン)と蒔絵を施す作業のお客様への供給には、制限をかけさせて頂いております。

基本的に所有者様からの直請けのみでのお取引とさせていただきます。

特別な会員のお客様のみ提供とさせて頂いております。

初回のお客様への提供は、行いません。

理由としては、以下のようになります。

・本漆を使用しますので、完成までに時間がかかります。

・気候の影響を受けます。

・全て手作業ですので、製作出来る数に限りがあります。

再塗装の製品は対象から除外いたします。

作業が行える数量に限りがありますので、螺鈿を施す対象は、当社で新規製作を行う特注製品のみに限らせて頂きます。

 

◆金庫以外への作業について

基本的に金庫以外への作業依頼は、お受けいたしません。

製作数に限りがあり、金庫への作業も制限をかけておりますのでご了承ください。

 

◆試作練習の実例

1:鮑薄貝螺鈿漆塗り男性用箸

持ち手を色漆で塗り、箸先に乾漆粉(漆を乾燥させて粉にしたもの)を蒔いて滑り止めになっております。

紫色の方は、自分で調色いたしました。

螺鈿は、鮑の薄貝を使用しております。

貝の形状は、丸や六角形を基本しています。

貝を丸や六角形に切り抜く刃物は、金属加工の技術を生かして自分で製作いたしました。

2:鮑薄貝螺鈿漆塗り夫婦箸、子供用スプーンとフォークセット

箸の持ち手は色漆で塗り、箸先に乾漆粉を蒔いて滑り止めになっております。

スプーンとフォークの先の色の違う部分は、地の粉で下地処理を行い補強して子供がかじっても傷みにくくしています。

藤色と水色の方は、色粉を混ぜで自分で調色いたしました。

螺鈿は、鮑の薄貝を使用しております。

子供用なので、貝を大きく切ってみました。

3:鮑薄貝螺鈿漆塗り女性用箸

箸の持ち手は色漆で塗り、箸先に乾漆粉を蒔いて滑り止めになっております。

水色の方は、自分で調色いたしました。

螺鈿は、鮑の薄貝を使用しております。

4:鮑薄貝螺鈿漆塗り夫婦箸

箸の持ち手は色漆で塗り、箸先に乾漆粉を蒔いて滑り止めになっております。

ピンク色の方は、自分で調色いたしました。

螺鈿は、鮑の薄貝を使用しております。

 

◆おわりに

いかがでしたでしょうか?

螺鈿はとても綺麗です。

綺麗ですが、手間がかかります。

昔の金庫には、装飾が施されている事が当たり前でした。

金庫から装飾が消えた時点で、装飾を楽しむ心の豊かさがなくなってしまったように思います。

心の豊かさで螺鈿や蒔絵などの装飾を楽しんで頂けたら幸いです。

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