今月で東日本大震災から5年という事で地震についてのお話しをさせて頂きたいと思います。
我々の業界は地震の被害と常に向き合い対策を繰り返さなくてはならない業界と言えます。
関東大震災では金庫で火災から財産を守る概念が出来ました。
欧米の金庫は他者から財産を守る事を主としているので現在でも外国では耐火性能がなく防盗性能のみの製品も『safe』と呼び金庫とされています。
日本では人災と天災から財産を守る必要がある為、日本の業界団体の金庫の定義は耐火性能を有す物を金庫とし耐火性能を有するのが一般的で火災に重点を置いています。
有さない物は鉄庫(てっこ)に分類され関東大震災を境にしていると思われます。
戦後以降は現在の耐火材が主流になり現在に至ります。(耐火材については以前の記事を参照ください。)
阪神淡路大震災では火災に加えて揺れや建物の倒壊の要素が加わりました。
火災時の庫内温度や高所からの落下の高さなど置き金庫の規格が見直されました。
その他には物の転倒の防止などの対策が行われました。
短期間で全国的に耐震固定の対策をしたのが印象的でした。
東日本大震災では水害の要素が加わりました。
津波の後のあの独特の匂いは今でも忘れられません。
被災から約一か月後のまだ関東でも影響が残る時期に東北の被災地で数十キロ流されて発見された置き金庫を関東まで持ってきて破壊解放した事もありました。
その際は、金庫本体と施錠装置の機構部分が海水で腐食して砂が固まってしまい
通常の錠前だけを破壊する方法では開ける事ができず金庫本体を破壊する特殊な開け方をしました。
千葉で津波の被害を受けた金融機関も印象的でした。
貸金庫の沢山のマス扉の開放を行ったのですが、ここでも海水の腐食と汚泥や砂により鍵で開ける事が出来ない状態で海水の腐食しやすさと砂の影響の特殊さを思い知りました。
①変形した部品の設置位置 | ②変形した部品 | ③扉開状態で固定するタイプの戸当り |
東日本大震災で体験した中で恐怖を感じたのは重い扉が勢い良く閉まり①の画像の位置についている直径50mmから最小部分35mmの鉄製の部品が②の画像の様に曲がっていました。
定規に比べると曲がっているのが分かりやすいと思います。
出入りの際にしか扉を開けない場合にでも開けた扉を固定する③の画像のようなタイプの戸当りの必要性を感じました。
大災害の度に新たに対策が必要な要素が増える傾向が有るので新たに加わりそうな要素を予想して対策を講じるのが良いと思います。
東日本大震災から5年以上経過して振り返ってみると、今までの常識が通用しない事が多く、色々な意味で状況に『今のままではダメだよ』と注意されたような気がする出来事であったと思います。